大浴場
谷川連峰に降る雨と雪どけ水を集めて、水音高らかに流れる湯檜曽川のほとりに湯煙をあげる湯桧曽温泉。湯の起原は室町時代、足利軍に追われた奥州の豪族・安部一族の生き残りがこの地にたどり着き、谷間に湧く湯を見つけて住みついたのが始まりといわれています。今は4軒の宿があり、ほぺたんはその中でも最も歴史が古い、大正11年創業の林屋旅館を訪ねました。
ほぺたん「林屋旅館」へ!
宿には湯檜曽川沿いに大浴場と小浴場の2つの内湯があり、加水も加温もしない温泉が24時間、ざぶざぶと投入されています。湯は清流のように透き通り、においもありません。
「いわゆる温泉らしい温泉ではありませんが、お客様は一度浸かれば違いがわかるようで、お湯がやわらかい、肌に優しいと喜んでくださいます」と4代目の女将さん。
客室から見る湯檜曽川
大浴場の天井を仰げば、アーチ状の天井に色とりどりのモザイクタイルが精緻に敷きつめられ、芸術品のようです。美しい天井には、こんなエピソードがあります。戦時中、タイルを張っていた職人が徴兵され「戻ったら仕上げます」と言って戦地へ赴きました。戦争が終わると彼は無事生還し、約束通り、やりかけの天井を仕上げてくれたそうです。
大浴場の天井
昭和9年には、歌人で大の温泉好きでもあった与謝野晶子も宿泊。館内には、晶子が宿代のかわりに書いて残した歌の掛け軸が飾られています。「掛け軸は他にもあったそうですが、昔の番頭がお酒と交換してしまい、これだけになってしまいました」と笑いながら女将さん。宿にまつわる人々の思い出にふれるのも、林屋旅館の楽しみです。
湯桧曽温泉は日本百名山「谷川岳」の登山口に位置し、春から秋はハイキングもおすすめ。谷川岳は子どもや登山初心者が楽しめるコースも豊富にあり、中でも手軽なのは、整備された舗装路を歩く「一ノ倉沢ハイキング」。山を登らなくても、日本三大岩壁の一つに数えられる一ノ倉沢に代表される迫力ある岩壁と、豊かな雪渓がおりなす絶景に出会えます。山歩きの後の温泉もまた、格別ですよ。
谷川岳「一ノ倉沢」
谷川岳の情報収集に立ち寄ったのは、谷川岳の自然と歴史を学べるこちらの施設。展示パネルの他に、プロジェクションマッピングやVR体験コーナーもあり、館内ガイドによる解説も楽しくわかりやすいと大好評。ハイカーでなくても、子どもから大人まで楽しめます。谷川遊びの休憩にもどうぞ。
谷川岳インフォメーションセンター
住所…利根郡みなかみ町湯桧曽字湯吹山地内
TEL…0278-25-8830
営業時間…
夏:9時~16時/冬(11月中旬~5月下旬):10時~15時
定休日…夏:無休/冬:水曜