【生産者情報】
岩手県北上市
有限会社ありす畜産(柿崎養豚)
「お肉がやわらかく、脂の部分に甘味がある」、「臭みが少ない」、「味がさっぱりしていておいしい」…お米育ち豚をご利用された組合員さんからは好評の声をいただいています。お米育ち豚とは、豚の肥育期間約6カ月間のうち、出荷前の約2カ月間、輸入とうもろこしに代わり、国産の飼料米(玄米)をすり潰したものを飼料全体の15%(※1)配合した餌を与えて育てている豚肉のこと。この商品誕生の裏には、日本の未来の食文化を守りたいというコープや生産者の思いがありました。
農林水産省の発表によると、2015年度の日本の食料自給率(※2)は39%、つまり食料の6割を海外からの輸入に頼っています。一方、日本では食生活の変化によりお米の消費量が減り続け、生産者の減少・高齢化により、休耕田が増えています。一度米作りを止めてしまうと、田んぼを再開させるのは大変な作業で、このまま田んぼが減ることは、日本の米作りの衰退につながりかねません。
そこでコープは2007年8月、お米の生産者に飼料米を作ってもらい、それを産直豚に餌として与える「お米育ち豚プロジェクト」の検討を始めました。豚にお米を与えることにより田んぼを守り、食料自給率を向上させることを目指した取り組みです。
しかし当初、人が食べるお米を作っている生産者にとっては、飼料米を作ることには精神的な抵抗感や、食用のお米と混ざってしまう心配がありました。また、どのくらいの量のお米を豚に与えるのが良いのか、生産・流通の効率化などの課題もありました。こうした課題を解決し、商品化を実現するために何度も話し合いが行われ、2008年にプロジェクトは始動。食料自給率の向上に向かって、異なる立場の人々が団結した瞬間でした。
飼料米作りと、それを豚に与える期間を経て、2009年宅配での供給が、翌年には店舗でも取り扱いが始まりました。当初、お米を与えても味は変わらないと考えていましたが、栄養成分値を複数回調べたところ、しゃぶしゃぶなどにぴったりの、脂身のさらっとした豚肉になることも分かりました。お米育ち豚の肥育頭数は、2009年と2016年では6倍以上に増えています。4年間にわたる、豚に与えるお米の量による味の違いの調査を経て、15%が最適という結論を得て、2017年4月から、店舗・宅配で販売するお米育ち豚は、与えるお米の量を10%から15%に変更しました。肥育頭数が増え、使用するお米の比率が増えれば、その分自給率向上にもつながります。
お米を作り、その米を飼料として豚に与えて育て、と畜・加工を経て、製品パックにし、組合員にお届けする。この、商品が生産者から組合員に渡るまでの一連の流れがフードチェーンと呼ばれるもので、コープの場合、関わっているすべての方々が明確です。そしてその方々の協力によって成り立つ、思いの詰まった取り組みです。
プロジェクトの検討開始から8月で10年。コープはこれからもこの取り組みを進めていきます。ぜひ日々の食卓でお楽しみください。
レシピ作成
NPO法人 食生活カウンセラーの会
【A】
「1月、岩手県産地学習交流会でお米育ち豚の産地へ行きました。まずは、自分の目で見たことで、売っている商品に対しての自信が湧きました。話を聞いて、生産者の努力や『おいしい豚肉を生産したい』という熱い思いを知りました。
取り組みの内容を知ってもらうことも大切ですが、まずはおいしいということをお知らせしたいです。それには、食べてみていただくのが一番だと思っているので、お店では1人でも多くの組合員さんに、試食していただける機会を作っていきたいですね。
あとは、どんなに良い商品を売っていても売り場の陳列が乱れているとおいしく見えませんので、スタッフと協力しながら『いつ来てもきれいだね』と言っていただけるよう努めていきたいです」
コープ職員(宅配)の声
2016年10月の産地視察・交流に参加して、地域担当として、日々組合員さんと交流しながら、たくさんの方にお米育ち豚のおいしさを知ってもらえるよう、伝えていきたいと思いました。
組合員さん(千葉県在住)の声
このシリーズはおいしいのよねと、子どもと話しています。
組合員さん(長野県在住)の声
飼料米の配合が15%に上がり、より一層やわらかく口の中でとろける印象を受けます。
お米育ち豚プロジェクトは岩手県で始まり、生産地は長野県、千葉県、茨城県、群馬県と5県に増え、お米育ち牛・鶏肉・たまごなど、シリーズも広がっています。
【広報誌2017年5月号より】