この時期、毎年楽しみな果物「産直もも」。
福島県福島市のふくしま未来農業協同組合(JA ふくしま未来)を訪ねて、
約30年桃を育てる生産者に、もも栽培について話を聞きました。
鼻を近づけるとほわんと甘い香りで、口に入れるとみずみずしくてジューシーな「産直 もも」。この季節の楽しみな果物の一つです。
生産者の一人であるJAふくしま未来(福島県福島市)福島地区もも専門部会 部会長の金子清高さんの畑を訪ねて、話を聞きました。金子さんは桃を育てて29年、家族4人でさくらんぼ、りんごも栽培する果樹農家です。1ヘクタールの広さの畑で、約150本の桃の木を育てています。
「糖度が高く、果肉がしっかりとして食感の良い桃を目指して栽培しています。目標糖度は12度以上。ちょうど良い熟度で収穫して、組合員の皆さんが召し上がる頃に一番おいしいのが理想です。食べたときに果汁が口に広がる状態でお届けできたらうれしいですね」とにこやかに話す金子さん。
金子さんの畑がある地域は盆地で、夏は湿度の高い暑さで、冬は雪が積もる寒さ。その寒暖差が桃の栽培に適しているのではないかといいます。
桃の栽培は、冬から春先まで続く木の剪定(樹勢管理)から、摘蕾、3度の摘果、その間にやる防除や新梢管理、7月から9月にかけての収穫、その後翌年に向けた新梢管理と続きます。
新梢管理では、混み合った枝を切ることで太陽がよく当たり、通気性・作業性を良くします。実にたっぷり養分が届くように、蕾の7割は落としてしまいます。そこからさらに実を選び、伸び続ける枝を相手に継続した管理で、太陽が当たるようにしたり、虫から守ったりしながら迎える収穫。桃を傷つけないように収穫は慎重に、家族以外の人には任せません。
金子さんが一番大切にしていることは、その時期にやらなくてはならない作業をきっちりやること。
「自分で責任が取れるものだけを出荷したいという気持ちでやっています。だから、食べた方に『おいしい』って言われたら本当にうれしいです。自信を持ってお送りしています」と金子さんはいいます。
おすすめの食べ方を聞いてみると、「水で洗って手で産毛を落とし、皮ごとくし形に切って食べるのが私は好きです。皮のザラザラ感はあるけど、皮と実の間が糖度・香りが高くて一番おいしいところなんですよ」と満面の笑顔で教えてくれました。今年の桃、皆さんはどのように食べたいですか? ぜひお手に取ってみてください。
1月~3月上旬頃に少しずつ樹勢を管理します。前年の収穫後に伸びて混み合っている枝を、収穫までにどのくらい枝が伸びるのか、また果実がなると枝が重みで下がることも計算に入れながら剪定し、木々の間に風が通り光が入るようにし、作業がしやすい形にします。
3月上旬~4月上旬の芽が出る時期、花が咲く前に蕾の7割を取ります。木に貯蔵されている養分を、実にする分だけに届ける調整です。花が咲き始め、その年の満開になる日を算出したら、合わせて次の作業の日程が決まります。例年4月19日頃が満開の日ですが、今年は4月5日に満開になりました。
摘果には5月頭に始まる予備摘果(果実が小さいうちに実を選んで残し、それ以外を落とす)、6月上旬頃の仕上げ摘果(成長具合を見ながらさらに実を減らし調整していく)、収穫の2週間前の修正摘果(変形・傷がついている実が出てきたらそれを落とす)があります。
甘い作物のため、虫は必ずつくし、病気にもなります。それを防ぐために10日おきに木の防除も行います。そしてこの間やけに伸びる枝を剪定(新梢管理)します。また、葉が実にくっつきすぎていると色付きに影響が出るため、日が当たるように少し葉を取り、収穫2週間前には畑に白い反射シートを敷いて、実の下から光が当たるようにして色付きが良くなるようにします。
7月中旬~9月上旬が収穫の時期。枝の先端の実から熟していくため、実の一つ一つ付け根の地色(緑から黄色になっているか)を見て「今日はここまで取ろう」と判断しながら収穫します。かごを背負って脚立に上り、桃を片手全体で包むように持ち、もう片方の手で枝を押すことで実が枝から離れ、実に負担をかけずに収穫できます。桃は何回も触らない、かごに入れすぎない、かごを運ぶときにも極力体から離し揺れを与えないようにします。
畑での選果は金子さんの母・喜子さんの役目。収穫したその場で、傷・あざがあるものは規格外として、規格別に分けてから出荷します。そして、収穫が終わると9月頃から次の年に向けて新梢管理が始まります。
【広報誌2023年8月号より】