収穫の様子。泥の中かられんこんを掘り出し、水面に浮かべた小舟のカゴに入れていきます
水をたたえた田んぼの深くに眠るのは、丸々と太ったれんこん。
日本一の産地・茨城県には、力強く有機栽培に取り組む生産者がいました。
茨城県は、日本一の生産量を誇るれんこんの大産地。れんこんの栽培には大量の水が必要で、大きな湖として知られる霞ケ浦周辺は水資源の豊富な田んぼが多いからです。
行方市の栗又農園もそのひとつ。2代目の栗又智さんは「いつでも冷たい井戸水があるので、近年の猛暑も水を足して水温が上がりすぎないようにしています」と説明します。
栗又農園 栗又智さん(写真中央)と外国人技能実習生のみなさん
ミネラル分に富んだフカフカの土にも恵まれ、同農園ではじゃがいもやごぼうといった根菜類を有機農法で栽培。れんこんは年間約40トンを生産しています。
有機JAS認証を取得したのは2007年ですが、先代は約50年前から循環型農業に取り組んできました。長年の土作りで、より肥沃な土壌になっているのでしょう。
「うちの圃場は土がいいので、イノシシが土手を掘り返してミミズを捕るんですよ。田んぼにはウナギやドジョウ、エビもいます。れんこんは甘みがあって、冬場はモチモチした食感でおいしいですよ」と智さんは誇らしげに話します。
植え付けも収穫も泥の中で行うれんこん。深いところでは腰まで泥に沈み、移動するだけで一苦労です。重い高圧ホースを持ちながられんこんを引き上げる収穫作業は重労働。手探りでれんこんを見つけ、水圧で折らないように掘り出すので神経も使います。飛び散る泥は顔にかかり、襟元から作業着の中に入ることも。真冬に最盛期を迎えるため、収穫作業は寒さとの戦いです。早朝から水面に張った氷を割りながら田んぼに入り、泥の中での作業は体が芯から冷える過酷さ。
「10時ごろには氷が溶けてきますが、冬は日が短いので、早い時間からやらないと注文に追い付きません」。
それでも、「注文が多いのは大変ですが、丹精込めて作ったものを欲しいと言ってもらえるのはうれしい。楽しみに待っている方がいると思うと、寒くても頑張れます」と智さんはにっこり。おすすめ料理を聞くと、「1cm弱の輪切りにしてバター焼きが最高ですね」と迷いなく答えてくれました。
焼いても煮ても、サラダでもおいしいれんこん。豊かな水と土で育った甘い有機れんこんを、ぜひいろいろな料理で楽しんでみてください。
3月、土を耕して水を張ります。前年に収穫せず取っておいた植え付け用のれんこんを、深さ30cm・等間隔に植え付けます。節から出ている新芽を成長させて新たなれんこんを育てるので、芽を折らないよう慎重に。「水の中での手作業なので、重労働です」
れんこんは「蓮の根」と書きますが、食べるのは肥大した「地下茎」という茎の部分。泥の中で横向きに成長します
4月~8月は水面に繁茂する浮き草(雑草)をこまめに網ですくい取り、れんこんに十分な日光や栄養を行き渡らせます。水が減ったらすぐに足して水位を保ち、暑いときはかけ流して水温を下げます。「除草剤を使わないため、数日おきに草取りをするのが大変です」
花(写真A)が終わった9月、「カラ」と呼ばれる水上の茎を切ります(B)。葉から茎を通じて送られる酸素を遮断することで「赤渋」が付かなくなり、白くえぐみの少ないれんこんになります。秋以降の収穫分は葉と茎が枯れカラ刈りは不要。れんこんは泥の中で栄養をたっぷり蓄えて生きています。

9月下旬から翌年2月末まで、注文に応じて収穫。高圧ホースの水流(写真C)で泥をほぐし、手探りでれんこんを引き上げます(D)。圃場内の洗い場で選別し、根や芽を切ってスポンジで丁寧に泥を落とすと、真っ白なれんこんが現れます(E)。作業場で再度選別し、きれいな断面が見えるよう端を切り落とし、箱に詰めて計量(F)、出荷します。
収穫が済んだところから順に、米ぬか、有機石灰、もみ殻や取り除いた浮草などから作った堆肥を加え、土に混ぜ込みます。「植え付け前にしっかり土を作るので、追肥はしません。微生物が増えれば土が強くなり、病気を防いでくれます」
【広報誌2026年2月号より】