購入直後はパリッとした歯ざわり、時間がたつとなめらかな甘みを楽しめる「産直 おけさ柿」。
産地の佐渡には、果樹栽培に適した風土と、誇りと愛情をもって柿づくりに取り組む
生産者の姿がありました。
寒いイメージのある新潟県の、日本海に浮かぶ佐渡島。実は対馬暖流の影響で気候は温暖で、中でも南西部にある羽茂地区は暖かく、果樹栽培に適しています。羽茂は佐渡のブランド柿「おけさ柿」の代表産地。佐渡の民謡「佐渡おけさ」からその名が付きました。栽培の歴史は90年以上で、「平核無」「刀根早生」の2品種の渋柿を栽培しています。
佐渡農業協同組合(JA佐渡)に勤め、自身もおけさ柿の生産者である佐藤和弘さんは、8年前に2代目として父から畑を引き継ぎました。
「父は専業農家で、今より広い面積で柿づくりをしていました。あまりに作業性の悪い畑が多かったので、父が他界してから少し整理したんですよ」。今は4カ所の畑に集約し、家族でおけさ柿を栽培しています。
「柿に適した温暖な気候に加え、元々の土壌に柿の生育に必要な養分が豊富に含まれていることも大きい」と佐藤さん。もちろん、愛情を込めて世話をすることも大事です。「大半の時間を剪定に費やします。枝をどう残すかで実の付き方や大きさ、味が決まります」
一年中何らかの作業がありますが、時期が厳密に決まった作業は少なく、比較的柔軟に対応できるといいます。
「でも収穫期だけは変えられません」と語る佐藤さん。
「おけさ柿の収穫サインは色。柿らしい濃いオレンジ色がおけさ柿の特徴なので、全体がムラなく色づいたら収穫適期です」
柿は気温が一定まで下がると着色スイッチが入るため、どの畑の木もほぼ一斉に色づきます。しかしすぐに収穫して出荷しないと、組合員の皆さんの手元に届く頃には熟し過ぎに。
「だから順番に畑をまわり、片っ端から収穫していきます」
佐藤さんは選果場勤務のため、一番忙しい収穫期に畑仕事ができません。
「収穫した柿は肩にかけた収穫カゴに入れていきます。カゴいっぱいまで入れると重さ7~8kgに。重労働ですが、収穫は母と妻、娘に任せています」
そして、選果場に運ぶ前に生産者自身が行うチェックが、おけさ柿の品質の高さを支えています。家族経営の小規模農家も多い羽茂では、大量生産が難しい分、品質を重視。どの農家もおけさ柿づくりに誇りを持っていて、選果場に集められた時点で高いレベルで選別されています。
「最近スーパーなどではカットフルーツが好まれていますが、柿は断面が変色しやすく不向き。みかんのように手で皮をむけないし、リンゴみたいに皮ごとかぶりつくものでもない。でも、おいしいんです。おいしいと言ってもらえるのが一番うれしい。私たちがつくる柿にハズレはないと思います」。
そのままはもちろん、スムージーにしたり、熟しすぎてしまったら冷凍がおすすめとのこと。種がないから、へたを取るだけで皮を器にしたシャーベットになります。
見て、食べて、秋の甘みを感じるおけさ柿。季節限定の味を、ぜひ楽しんでみませんか。
冬から早春にかけて、古い枝や密集している枝をカットし(写真A)、風通しや日当たりを良くします。
土づくりには鶏糞などの有機物を入れることもあります。弱っている木には後日追肥。菜の花が咲くころに新芽が出てきます。
初夏、蕾がつき始めたらバランスをみながら余分な蕾を落とします。その後、多すぎる実を間引く作業を収穫まで適宜行います。実を多く付けすぎないようにすることで、残した実に養分が十分届き、大きくおいしい実になります。
7~8月になると実が大きくなり、重みで垂れてきた枝を柱やひもで支えます。羽茂では収穫しやすいよう枝を低く管理しており、樹勢を保つため収穫まで随時実施。
病害虫駆除のため5月中旬から収穫まで9~10回ほど農薬を散布。大型防除機を管内の農家が共同で使い、協力して作業しています。年に5、6回草刈りをします。
夜間の平均気温が一定の温度まで下がると着色スイッチが入り、色づき始めます。色が目安の濃さになったら収穫(写真B・C)。
実に傷がつかないようクッションを当てたカゴに、一つ一つ入れていきます。収穫後は生産者自身がそれぞれ選別を実施(D)。佐藤さんの家では帰宅後に行っていて、夜11時頃までかかることもあります。
JAの共同選果場で、渋抜きをします。炭酸ガスとアルコールを併用することで、やわらかい肉質となり、とろけるような舌ざわりが生まれます。
機械と人の目で傷の有無や大きさなどを確認して等級分けし(E)、箱詰め(F)して出荷です。
【広報誌2024年10月号より】