ガブっとかじると、口に広がる果汁。
太陽の光をたっぷり浴びて育った幸水はみずみずしく、
シャリシャリとした食感と、爽やかな甘みが味わえます。
今回は、茨城県にある産地、JA常総ひかりを訪れました。
「幸水のおいしさは、何といってもシャリシャリとした食感と、爽やかな甘さだね」。そう話すのは、なしを作り続けて35年になる、JA常総ひかりの生産者、大塚武雄さん。
なしの栽培で一番大変なのが、受粉作業。冬の土づくりや枝の剪定(せんてい)に始まるなしの栽培は、このためと言っても過言ではありません。どの実にも日光が当たるように、実が密集して枝に負担がかからないように考えながら、花の開花と同時に一つ一つ手作業で受粉作業を行います。
「何百本もある木がほぼ同時に満開を迎えるから、もう大変! 花の寿命は約3日しかないので、その間に全ての花に受粉させないといけないからね。このときは神経も体も使って、ホントくたくたになるよ」と栽培の大変さを教えてくれました。
受粉作業が終わると、5月上旬から1カ月ほどかけて、実を間引く摘果(てきか)が始まります。1本の木の養分は限られているため、見極めはとても重要だといいます。
「木全体の形や枝の太さ、実の形など、一つ一つ確認しながら摘果して、残した実に木の養分を送り込んであげるんだよ。毎日畑に行って“この木は葉の緑が濃くて元気だな” “この枝は細くて無理させられないな”とか、口には出さないけれど、木と会話しているよ」と笑います。
日々、丹精込めて育てた幸水は、開花から約100日、真夏に収穫期を迎えます。 「旬の、なし本来の味をぜひ味わってほしいし、たくさん食べてもらいたいと思いながら、一番おいしくなった頃を見計らって収穫しているよ。無事に収穫できると、ホッとするし、木にも“お疲れさん、今年も頑張ってくれてありがとう”って話しかけちゃうね」と思いを語ってくれました。
幸水から始まり、秋にかけて、豊水(ほうすい)、あきづき、新高(にいたか)など、さまざまな品種のなしが登場します。ぜひ食べ比べて、自分好みの味わいを見つけてみてはいかがでしょうか?
●幸水
取り扱い時期:7月中旬~9月上旬頃
なしの品種の中で一番最初に出回るトップバッター。シャリシャリとした食感で、果汁が多く、爽やかな甘さが特長です。
●豊水
取り扱い時期:8月上旬~10月上旬頃
果肉が軟らかく、果汁たっぷり。甘みの中に、適度な酸味があり、甘みと酸味が見事にマッチしています。
●20世紀
取り扱い時期:9月中旬頃
果汁が多く、シャリシャリとした食感で、甘みと酸味のバランスが良い品種です。
●あきづき
取り扱い時期:9月下旬~10月上旬頃
シャリシャリとした食感で、甘みが強く、果汁も豊富。幸水、豊水、新高の良いとこどりをしたような味わいです。
●新高
取り扱い時期:9月下旬~10月下旬頃
なしの王様とも呼ばれる、大玉のなし。酸味が少なく、風味もみずみずしさも兼ね備えた品種です。
●南水(なんすい)
取り扱い時期:10月上旬~10月下旬頃
果肉が比較的軟らかく、糖度が高いのが特長。酸味が少ないので甘みをしっかり感じられます。
※取り扱い時期は変更になる場合があります
冷やしすぎると甘さが薄れてしまうので、食べる1時間くらい前に冷蔵庫に入れ、お召し上がりいただくのがおすすめです。
乾燥しないように新聞紙で包み、冷蔵庫の野菜室で保存してください。約1週間はおいしい状態で保存できますが、早めにお召し上がりください。
形や味わいの違いは、皆さんご存知かと思いますが、こんな違いもあります。
収穫後、和なしは追熟しないので、すぐに食べることができますが、洋なしは追熟させる必要があるため、食べ頃には注意が必要です。
【広報誌2016年8月号より】