2017年11月27日
震災で里親になった人たちを支えていく
宮城県では、震災で両親を失った子ども139人(※1)のうち約6割が里親制度のもとで養育されることになりました。里親となったのは、ほとんどが祖父母やおじ・おばなどの親族です。
「震災で里親になるというのは極めて特殊な体験です。誰とでも話せることじゃなく、理解し合える相手もいない。里親同士、気持ちを共有し合える場が必要でした」。
里親会である宮城県なごみの会の卜蔵(ぼくら)康行さんは、そのように当時をふり返ります。なごみの会は県の委託を受けて2012年3月に里親支援事業を開始。東北大学震災子ども支援室の協力を得ながら石巻・東松島・気仙沼の3カ所で「親族里親サロン」を開催してきました。
里親は、自身の喪失感と震災体験の痛みに向き合いながら、孤児となった子と一緒に暮らす道を選びました。子ども(孫)とは元々三世代同居だったので違和感がないという人、親族で話し合って引き取ることになった人など、その"親子"関係は様々です。
サロンに参加した里親たちは、里親になって生じた生活の変化への戸惑いや高齢で再び子育てを始める不安、母親の死亡を孫に伝えられずにいることなど、それぞれの気持ちを語り合いました。
最初は子育ての悩みを共有する場だったサロンですが、卜蔵さんは「サロンに参加しているご家庭を見ていると、6年経って大分子どもとの関係が安定してきているのが分かります」と話します。
それでも高齢の里親のなかには、病気など健康上の問題や経済的な不安を抱えながら子どもを養育している人もいます。また、思春期を迎えた子をうまく育てられるか、子どもが社会に出ていくまで自分たちが元気でいられるだろうかと心配する人も多くいます。
里親を支援する活動は、2017年、みやぎ里親支援センターけやき(※2)に移行しました。センター長でもある卜蔵さんは忘れないことが課題と言います。「里親さんたちに"皆さんのことをいつも忘れずにいる者がいる"ことを知っておいてほしいので、参加者がゼロになるまでサロンは続けます」。
震災で里親になった家庭と気持ちを通わせながら、卜蔵さんたちの活動は今後も続きます。
※1 宮城県によるデータ
※2 みやぎ里親支援センターけやきは2017年1月発足。県の委託を受け、宮城県なごみの会と社会福祉法人キリスト教育児院が共同で里親を支援しています。
▲みやぎ里親支援センターけやき。センター長の卜蔵康行さん(右)とスタッフの遠藤さん。